一人称よりも二人称のほうがやっかい

一人称は、まだいい。「私」という、万能に使える一人称があるから。そりゃ堅い感じがしたり、男が普段使うとちょっとおかしかったりするかもしれないけど、まあどんな場面でも無難に使える。

問題は二人称である。万能に使えるものがないから、こいつはやっかいだ。
日本語は、相手によって二人称を実に幅広く使い分けている。「あなた」「おまえ」「君」「お宅」「先生」「お客様」「御社」「てめえ」「そち」「そなた」「貴様」「主(ぬし) 」(by 賢狼) ・・・どれも使い分けが必要なものばかりで、どの場面でも無難に使えるというような二人称がない。

たとえば就職活動をしている学生が、面接の場で相手の面接官に声をかけたいとしよう。何と言って声をかければいい?「あなた」・・・は違うよね。いちばん万能に見える「あなた」ですら、この場面では使えない。「○○さん」と呼ぶのがいちばん無難だけど、相手の名前がわからないと呼べないし。仕方ないので、「あの、」とか「すみません、」とか、二人称は使わずに、声をかけるしかない。

そう考えると、全部「You」で済んじゃう英語って便利だよね。日本語の二人称が多彩なのは、それだけ人との関係性を重視した文化だと思うからそれを否定するつもりはないんだけど、言葉は多彩なままでいいから万能に使える二人称も生み出して欲しかったよ。