IPAX2008での経営者と学生の討論会:感想
平日の真っ昼間だというのに、IPAX2008で行なわれた、経営者と学生の討論会を見に行った。
- @IT: 「10年は泥のように働け」「無理です」――今年も学生と経営者が討論
- IT Pro: 「IT技術者はやりがいがある仕事か」---学生とIT産業のトップが公開対談
- 雑種路線でいこう: 夢のあるITには若手が殺到している 刹那的な業態が見切られただけ
詳しくは上の記事をみていただくとして、個人的に思った感想を。
- 実際に参加した身からいうと、@ITの記事はタイトルからして煽りっぽい。『一連の@ITの記事は、特にネガティブに取れる箇所ばかりを意図的に取り上げているように思えてならない。』という指摘は、自分も思った。去年の記事が話題を呼んだので、その味をしめてしまったのだろう。
- この討論会はIT業界の話だったけど、これってどの職業でも成り立つよなと思った。IT業界やアニメ業界がひどいのはよく知られているけど、マクドナルドの賃金不払いとかみても、他の業種だって似たり寄ったり。
- 学生にコミュニケーション能力や日本語の文章能力がないという批判が経営者側からなされていたけど、それらを経営者は持っているつもりなのが滑稽だった。例えば『経営って楽しいですか? どういうところが面白くて経営者になったんですか?』という学生の質問に、『だったら一生エンジニアしてなさい』と経営者が答えてたんだけど、それって答えになってないよね? 相手の質問からずれた回答をするのはコミュニケーション能力に欠けてるんじゃない?
- 「企業が学生に求めること」と「大学が重点的に教えていること」のアンケートがあって、両者に大きな開きがあるというのは、確かに問題だと思った。ただ、これは学生の出身大学と出身学部を両方で一致させないとあんまり意味ないように思う。例えば「MARCH*1の学生を採用した企業が学生に求めること」と「旧帝国大学*2の情報学科が重点的に教えていること」では違いがあって当然すぎる。
- 『最近の学生はハングリー精神が足りない』という経営者がいたけど、そんな若者を育てたのはおまえらやん! とツッコミたくて仕方なかった。この経営者のご子息はさぞかしハングリー精神に溢れているんだろう。もちろん親が車買ってあげたり、頭悪いのにブルジョア私学に入れたりはしてないよな?
- 経営者の会社に入社して3年目ぐらいの若手を呼ぶべきだと思った。経営者が言っている「きれいごと」に対して、それか本当かどうかを語ってもらうため。
- 大学の先生も討論会に含めると面白いかもと思った。企業が大学教育に不満を言っているけど、大学側だって企業にぜったい不満があると思う。
- 『本当に専門家といえる学生が少ない』と経営者(たしかCSK有賀氏)が発言してたけど、本当に経営者といえる人間だって少ないよ? 経営者たる器にない経営者のほうがずっと多いことは無視ですか?
- 『10年間は泥のように働け』という言葉が一人歩きしているけど、それは上司次第だよなと思う。10年後に報われる保証がない時代に、10年も頑張っていたらマヌケ。それを分かってない経営者もマヌケ。というか、10年も頑張らないと1人前になれないなら、本人にも、またそれを育てる側にも大きな問題があると思う。
- 経営者の意見とは違って、自分は「最近の学生は優秀やなー」と思った。討論会の舞台上でいちいちメモとってるんだぜ? 発言だって、経営者より論理的でわかりやすかった。こんな優秀な学生を、企業は潰してしまうんだろうなと思うと、なんだかやりきれない。
- 司会の人はけっこう頑張ってた。『日本の企業もぬるま湯ですね』なんていう発言は、なかなかできることではない。
あと、展示のほうも見てきた。
- 「グーグル八分発見システム」では、GoogleだけじゃなくてYahoo!と百度も対象にしているようで、「ある日、Yahoo!の社内からアクセスが増えたと思ったら、数日後にいきなり検索順位が大幅に下がったサイトがある」という実話が面白かった。
- 「すばやく手軽に映像を編集して共有するソフトウエア。LoiLoScope」は、映像技術もさることながら、UIが秀逸だった。ぜひAppleから出して欲しいと思うようなソフトだった。
- 「映像技術 Live2D( 3D+)」は、2Dで描いたイラストが3Dのように動かせるソフト。3Dは敷居が高いけど、これならだいぶ敷居が低くなる。個人的に今回のベスト1だった。
- 「三次元折紙設計ツールの開発」は、実際に用意された折り紙のデモが圧巻だった。というか、これはもう折り紙じゃなくね?
- 「プログラミング言語Rubyの処理系」はブースに誰もいなかった。というか、けっこう空のブースが多かった。